症例

【白内障】 見える景色が一変するだけでなく、気力も体力もアップの毎日です

calendar_today2024.05.01label#単焦点レンズ#日帰り白内障手術

Kさまの症例解説(院長:松岡俊行)

Kさまは、右眼は10年前から見えず、左眼は半年前から霞み、日常生活に支障をきたす状態ということで受診された患者様です。これまでは病院が怖くて通院したことがないとのことでした。

初診時データ 水晶体 眼底
右眼 手動弁 NS4 透見不能
左眼 裸眼0.08 矯正0.2 NS3 正常範囲内(両目に重度の白内障)

 


特に右眼は、眼底透見不能なほど混濁しており、通常の超音波手術困難が予測されました。患者様は、左眼のみの手術を希望されました。しかし、今の状態で左眼の手術をすれば、手術後に左眼に眼帯をすれば、全く何も見えなくなります。

日帰り手術希望ですが、一人で帰ることはできません。従って、困難ではありますが、右眼の手術を先行してすることにしました。一方、右眼の手術を頑張ってしても、眼の奥に網膜剥離などの病気があった場合は、視力回復がかなわないこともあります。右眼は手動弁ながら、視力は残っていますので、水晶体再建術を施行すれば、健全な視力を取り戻す可能性が十分あると考えました。

患者様の希望に寄り添って

手術後の目標屈折度は、患者様から以下の希望をいただきました。

「もともと近視で、運転しないので、遠くはそんなに見えなくてもいい」
「できるだけ老眼鏡をかけたくない」
「保険診療(単焦点レンズ)で手術を受けたい」

これらのご希望を踏まえ、目標屈折度は、両眼-2.0D(理論上の焦点距離は50cm)としました。近くは快適に見え、遠くもメガネなしでそこそこ見える感じです。

手術後の様子とその後の経過

当日、手術ではチン氏帯脆弱のため水晶体嚢拡張リングを使用したりと、時間はかかったものの、無事に眼内レンズ挿入眼となりました。

術後、患者様は遠くの裸眼視力は0.5である程度見えているとのこと。また老眼鏡を使わず何でも見えるようになっているとのことです。何より、両目が見えるようになったので、失っていた遠近感を取り戻し、生活がすごくアクティブになったとのことでした。

当院では、患者様の生活スタイルやご希望に応じて、目標設定度数を変えています。しっかりお話を伺うことで、患者様が求める見え方に近づけています。

 

患者様インタビュー(Kさま)

レンズ 単焦点眼内レンズ
お名前 K
ご年齢 80代

何もかもがよく見えず、怖くて外出もままならない日々

私は以前から息子夫婦と一緒に暮らしていて、家の掃除をすることと朝ごはんの準備をすることを日課としています。特別に綺麗好きというほどではありませんが、家具の上に積もるほこりや床の汚れは気になる性分で、雑巾を持って家中を拭いて歩く毎日です。

右目に異変を感じたのはもう10年も前のことで、白くモヤがかかったように色々な物が見えづらくなっていました。そうはいっても日常生活に支障をきたすほどではなく、そもそも私は病院があまり好きではないこともあって、「今はまだいいか。そのうち診てもらおう。」そう思いながら、眼科に行くことを先伸ばしにしていました。

 

月日が流れるにつれ、掃除をしていても汚れやほこりもだんだんと見えにくくなり、近ごろでは雑巾で拭いた後が綺麗になったのかもよく分からないまま、それでも体が覚えている感覚を頼りにほとんど当てずっぽうに作業を続けていました。

 

朝食のサラダに使う野菜を切るときも、細かいところまではよく見えていない状態で千切り野菜の切った幅がどんどんと太くなっているな、と自分でも分かっていました。

物が見えづらい症状がだんだんと進むにつれ、外出の機会もほとんどなくなってしまいました。景色がよく分からないまま外を出歩くことはとても神経を使います。信号機の色さえよく見分けがつかず、交差点では周りの人が歩き出したら「信号が青に変わった証拠」とばかりに人々の後ろをついていくように歩いていました。このような状況は自分でも危なっかしいと思っていましたし、そのうち外を歩くこと自体が怖くなってしまいました。目が見えづらいことから始まり、次第に出歩く機会が減ることで足腰もだんだんと弱ってしまいました。健康からどんどん遠のいていくような、悪い循環ですね。

 

活動的な私を見て家族も安心してくれています

そんな私の様子を見て心配してくれたお嫁さんは、インターネットで病院を調べてくれるようになり、「ここは良い病院だと思うから行ってみましょう。」と私を連れて行ってくれた先が江坂まつおか眼科でした。

 

検査してすぐに白内障と診断され、私は単焦点レンズの手術をしていただきました。毎日の暮らしの中で、料理や掃除に困らないことが一番の希望だったので、私は単焦点レンズの中でも近方に焦点を当てるレンズを選びました。

 

手術について、先生は私に分かりやすく丁寧に説明をしてくださったので安心はしていましたが、なにぶん初めてのことですから「もし痛かったらどうしよう」、「手術が終わるまで辛抱できるかしら」と多少の不安はよぎりました。ですが、終わってみたらそんな心配は全く必要ありませんでした。私の場合、手術の最中はもちろんのこと、術後も痛みは全く感じませんでしたし痒みや違和感も何もありませんでした。これは手術から1ヶ月以上経過した今でも同じで、まさに「痛くも痒くもない」という言葉がぴったり当てはまります。

 

白内障の手術を終えて、今の気持ちを一言で言うと「快適そのもの」です。

おかげさまで、日課の掃除も今まで以上に精が出るようになりました。作業がはかどるものですから、手術する前の私の掃除はどれだけいい加減だったことか、と心配になってしまうほどです。同居する家族から文句を言われたことなどありませんでしたが、それは私への優しさからあえて黙っていてくれたのではないでしょうか。そんな家族にも「今まで心配や迷惑をかけました。ありがとう。」と感謝の気持ちを伝えたいです。

朝食作りにも大きな変化がありました。以前は手を切ってしまうのではないかと不安で、キャベツの千切りやきゅうりの薄切り、にんじんの細切りなどは恐る恐る手を動かしていましたが、今では彩りよく盛り付けた野菜サラダをいただく朝の時間がとても楽しく感じられます。

景色があまりよく判別できなくなって以降、外出が怖くてもっぱら家で過ごす毎日でしたから私にとって一番の娯楽といえばテレビを見ることです。そのテレビでさえも手術前はぼんやりとしか映像を確認することができず、聞こえてくる音声を頼りにただ何となく画面を眺めているだけの状態でした。今では世の中で話題になっている出来事に驚いたり笑ったり、、、おかげさまでテレビを見ながら家族との会話も増えたように思います。

家から江坂まつおか眼科まではゆっくり歩いて30分ほどですが、私は今、術後の経過観察に通うその道のりも散歩がてら景色を楽しみながら歩いています。「転ぶのではないか」「人や自転車、車にぶつかっては大変だ」という不安が減った分、歩く距離や歩数が増えてよく日光をよく浴びるようになりました。前より活動的で明るくなった私の表情を見て、息子夫婦も安心してくれています。