角膜(くろめ)の役割
角膜は、目の中央にある直径11mmくらいの円形の組織です。透明で血管を持たず、日本人では黒く見えるので、一般的に黒目と言われています。
角膜は、網膜上に焦点を合わせる、物を見るための重要な役目を持っています。角膜が何らかの原因で病気になり、濁ったり、いびつになったりすると視力が低下します。
角膜炎
角膜炎は、目の表面にある角膜が炎症を起こす病気です。細菌やウイルス、真菌などの感染が一般的な原因となります。
こうした感染は結膜炎、角膜炎、角膜潰瘍、眼球運動障害、ぶどう膜炎などをおこし、視力低下、目やに、充血、流涙、複視などの症状が生じます。
治療について
目の治療には軟膏をつかいます。眼内に炎症が起こっている場合には内服や点滴も使います。時に炎症がひどい場合には、ステロイド剤を併用することもあります。
さまざまなヘルペス
Herpes(疱疹)は、小さいみずぶくれ(小水疱)が出現する病気です。ギリシャ語で「這う」という意味で、2種類あります。単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus:HSV)による単純疱疹、水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella zoster virus;VZV)による帯状疱疹。いずれも一度感染すると一生涯からだに住みつき、免疫力が低下したときに再発するという特徴があります。
単純疱疹
皮膚や粘膜に小水疱やびらんを生じます。HSV-1とHSV-2の2型に分類されます。
HSV-1は顔面、口唇に再発し、HSV-2は下半身、特に性器に再発を繰り返します。主に接触感染します。
HSV-2は主として性行為で感染します。抗ヘルペス薬(アシクロビル、バラシクロビル)の内服、重症例では抗ヘルペス薬(アシクロビル、ビダラビン)の点滴静注を行います。細菌の二次感染を防ぐため抗生物質の全身投与または外用を行うこともあります。
単純疱疹
水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の初感染は水痘(みずぼうそう)になります。がこの時に神経にウイルスが潜伏します。潜伏感染していたウイルスが、再活性化して発症するのが帯状疱疹です。ウイルスは神経に伝って水疱が帯状に出現します。他のヒトから感染して帯状疱疹になるわけではありません。治療は、抗ウイルス薬(アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビル)の全身投与。重症なものは、入院して点滴が必要です。約2週間でかさぶたとなり、約3週間でかさぶたは脱落して治癒します。
目の周りに出るヘルペス”眼部帯状疱疹”
帯状疱疹ウイルス(VZV)を発症し、顔や目の周りの皮膚に生じた場合は失明の危険性があります。帯状疱疹ウイルスが角膜や虹彩に炎症を引き起こし、網膜や視神経に侵入すると、視力低下や失明を引き起こす可能性があります。
まぶたの発疹、腫れのほか、眼球の充血、目の痛み、視力低下などの症状があります。結膜炎・角膜炎・強膜炎・虹彩毛様体炎・外眼筋麻痺など、さまざまな障害が起こる可能性があります。
角膜障害では、角膜の表面にウイルスが感染し、異物感や眩しさを感じたり、涙目になったりする偽樹枝状角膜炎(ぎじゅしじょうかくまくえん)などがみられます。眼の症状は発疹のピークより遅れて出てくることも多いので注意が必要です。
抗ウイルス薬の眼軟膏の点入(下まぶたの結膜嚢けつまくのうに指や綿棒で塗る方法)、二次感染を防ぐため抗生物質の点眼、抗炎症のため副腎皮質ステロイド薬の点眼をします。
ぶどう膜炎などの場合は、眼圧上昇に対して緑内障治療点眼薬による眼圧コントロールが必要になることもあります。目の異常は、改善に時間がかかることが多いため、皮膚症状が改善しても治療が継続する場合もあります。
単純角膜ヘルペス
角膜(くろめ)がヘルペスに感染して起こる病気です。ヘルペスは普段、三叉神経の根本に潜伏していますが、体の抵抗や免疫が下がっているときに角膜(くろめ)に症状を引き起こします。
しばしば再発をする病気であり、繰り返すことで角膜が白くなった場合は、角膜移植が必要になることもあります。
症状
- 涙がでる
- ころころする
- 眩しい
- 充血する
治療について
抗ウィルス薬「アシクロビル」を用い、ヘルペスウィルスの増殖を抑えます。また細菌感染が起きないよう抗菌薬の点眼を使います。
帯状ヘルペス性角膜炎
帯状疱疹に伴い発生する角膜炎です。帯状疱疹は、幼少期に感染した水痘・帯状疱疹ウィルスの再帰感染(さいきかんせん)によって起こります。加齢・ストレス・過労や、免疫力が低下したときに発症します。体の左右どちらかに生じる痛みやかゆみを伴う発疹です。
症状
- 痛み
- かゆみ
治療について
目の周りに現れたものは「眼部帯状疱疹」と呼ばれ、特に注意が必要です。発症初期から結膜炎や角膜炎などが起こることもあります。
角膜浮腫
角膜浮腫は、角膜に液体が溜まって腫れ上がる状態を指し、視力の低下やぼやけた視界を引き起こします。
原因
眼内炎、外傷、過度のコンタクトレンズ使用、手術後の合併症などが原因で起こることがあります。
症状
- 視力の低下
- 視界のぼやけ
- 眼の重さ
治療
原因の特定と治療が重要です。塩化ナトリウム点眼薬や、必要に応じて内服薬を用いて対処します。重症例では角膜移植が選択されることもあります。
円錐角膜
円錐角膜は、角膜が中央部から突出して薄くなり、コーン形に変形する進行性の眼疾患です。