1. はじめに
白内障と緑内障は、どちらも視力に影響を与える眼の病気です。高齢者に多くみられ、同時に発症することも少なくありません。最近では、白内障手術と緑内障手術を同時に行うことが一般的になりつつあります。本記事では、その歴史、手術方法、最新の治療法について詳しく解説します。
2. 白内障と緑内障の基礎知識
白内障とは?
白内障は、水晶体が濁ることで視力が低下する病気です。加齢が主な原因で、進行すると視界がぼやけたり、光をまぶしく感じたりします。
治療には、濁った水晶体を人工レンズに置き換える手術が一般的です。
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緑内障とは?
緑内障は、眼圧の上昇などが原因で視神経が障害を受け、視野が狭くなる病気です。
進行すると失明に至ることもあります。治療には、眼圧を下げる薬物療法や手術が行われます。
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3. 白内障と緑内障の同時手術の歴史
以前は、白内障手術と緑内障手術は別々に行われるのが一般的でした。しかし、手術技術の進歩により、同時に行うことで患者の負担を軽減し、より効率的な治療が可能になりました。特に、近年の低侵襲緑内障手術(MIGS)の発展により、白内障手術と組み合わせることが容易になりました。
4. 白内障と緑内障の同時手術のメリット
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- 手術回数の削減:一度の手術で両方の疾患を治療できるため、患者の負担が軽減されます。
- 術後管理が容易:手術後のケアが一度で済むため、通院回数が減ります。
- 視力改善の効果が高い:白内障手術によって視界が明るくなるだけでなく、緑内障の進行を抑える効果も期待できます。
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5. 白内障手術と同時に行われる緑内障手術の種類
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従来の緑内障手術
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- 線維柱帯切開術(トラベクロトミー)
眼圧を下げるために線維柱帯を部分的に切開し、房水の流れを改善します。
- 線維柱帯切開術(トラベクロトミー)
- 線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)
線維柱帯を一部切除し、房水の排出路を新たに作ることで眼圧を低下させます。
これらの手術は眼圧を下げる効果が高いものの、合併症のリスクも伴います。
6. 最新の低侵襲緑内障手術(MIGS)
MIGS(Micro-Invasive Glaucoma Surgery)は、従来の手術に比べて体への負担が少なく、回復が早いのが特徴です。
代表的なMIGSの種類と原理
1. iStent(アイステント)
- 極小のチタン製のデバイスを眼内に挿入し、線維柱帯を通して房水の流れを改善。
- 白内障手術と同時に行うことで、追加の切開をせずに済む。
- 手技:白内障手術中に、眼内の線維柱帯に小さなステントを挿入し、房水の流れをスムーズにする。
2. Hydrus Microstent(ハイドラスマイクロステント)
引用:Alcon
- 眼の排水システムを拡張し、房水の流れを促進。
- 手技:小さな金属製のステントをシュレム管に挿入し、房水の排出を助ける。
3. Kahook Dual Blade(カフックデュアルブレード)
引用:Michigan Glaucoma & Cataract
- 線維柱帯を切除し、眼圧を下げる。
- 手技:専用のデバイスで線維柱帯を切開し、房水の流れを改善する。
4. XEN Gel Stent(ゼンジェルステント)
引用:Omni Eye Services of Atlanta
- 柔軟なゲル状のチューブを挿入し、房水の排出を改善。
- 手技:結膜の下に細いゲル状のステントを挿入し、房水をバイパスさせる。
7. 白内障とMIGSの同時手術の流れ
- 術前検査:眼の状態を詳しく調べ、適切な手術方法を決定。
- 麻酔:通常、点眼麻酔を使用。
- 白内障手術:
⚫️小さな切開を入れ、水晶体を超音波で破砕し除去。
⚫️人工レンズ(IOL)を挿入。 - MIGSの施術:
⚫️iStentやHydrus Microstentなどのデバイスを眼内に挿入。
⚫️線維柱帯の一部を切開(Kahook Dual Blade)する場合もある。 - 術後管理:点眼薬の使用や定期的な診察。
8. 術後の経過と注意点
- 視力の回復:通常、数日から数週間で改善。
- 眼圧の管理:MIGSにより眼圧が安定するか経過観察が必要。
- 定期検診:手術後も定期的な診察が推奨される。
9. どのような患者に適しているか?
- 白内障と緑内障を同時に持つ患者。
- 眼圧のコントロールが必要だが、従来の手術を避けたい患者。
- 低侵襲(身体への負担が軽い)の手術を希望する患者。
10. まとめ
白内障と緑内障の同時手術は、患者にとって大きなメリットがあります。特にMIGSの登場により、安全性が向上し、回復に必要な期間も短縮されました。眼科医と相談しながら、最適な治療法を選択することが重要です。
白内障と緑内障に関する最新の情報や治療方法について、詳しくは当院までお問い合わせください。