遠近両用メガネは、1つのレンズで近くと遠くの視力を同時に補正できるメガネです。
老眼(presbyopia)が進行すると近距離が見づらくなるため、遠近両用メガネを使うことで、老眼鏡を何度も掛け外しする必要がなく、快適な視生活を送ることができます。このメガネは、遠距離と近距離の視力をスムーズに補正し、日常生活を便利にしてくれます。
1. 遠近両用メガネの仕組み
遠近両用メガネは、レンズ内に複数の視力補正ゾーンを持っています。遠距離用と近距離用の視力補正が1本のメガネで同時にできるため、日常的にメガネを掛け替える手間が省けます。レンズは上下に異なる層があり、目の動きに応じて近くから遠くまでスムーズに焦点を合わせることができます。
1.1 バイフォーカル型
バイフォーカル型は昔からある遠近両用メガネです。レンズの上部に遠距離用、下部に近距離用の補正ゾーンを配置しています。上部は遠くを見るために使用し、下部は読書やスマホなど近くのものを見るために使います。
引用:HOYA
バイフォーカル型のメリット
- レンズに明確な境界線(ライン)がある分レンズ全体の歪みが少ない
- レンズのどの部分こで手元を見ればいいのかがわかりやすい
バイフォーカル型のデメリット
- 他の人から老眼鏡をかけていることがすぐにわかってしまう
- 視界に境目がはっきりと見えるので気になってしまう人も多い
- 遠用と近用の2つの度数しかないので中間距離をカバーすることができない
- レンズの明確な境界線によって視界が断絶されるため、上下の視界が切り替わる際に違和感を感じることがある
1.2 プログレッシブ型
引用:メガネのフォーサイト
プログレッシブ型は、レンズ全体が滑らかに視力補正を提供します。
レンズの上部から下部にかけて、遠距離から近距離まで途切れることなく視力が変化します。顔を上げると遠くを、顔を下げると近くを見るという感覚で使用できます。ただし、最初は焦点がスムーズに合わず、慣れるまで数日から数週間かかることがあります。
プログレッシブ型のメリット
- バイフォーカルレンズのように境目がないため外見上も自然で、視覚的な段差を感じにくい
- 遠方~近方まで幅広い距離を一本のメガネで対応できる
- 遠~中~近と滑らかに度数が変わっていくため、視線移動に伴うピントの飛びが少なく、自然なピント移動が可能
プログレッシブ型のデメリット
- 遠~中~近の各エリアの見え方に順応する必要があるため、慣れるまで時間がかかる場合がある
- 特にレンズのサイド部分(上記の図では収差と呼ばれる部分)で歪みが出やすく、視線移動で違和感を覚える場合がある
2. 遠近両用メガネの光学的な仕組み
遠近両用メガネは、ジオプター(D)を使って視力を補正します。
ジオプターはレンズの屈折力を表す単位で、1ジオプターは1メートルの距離で1メートルの焦点を合わせられる屈折力です。
近距離視力補正にはプラスのジオプター(+1.00D〜+3.00D)を使用し、遠距離視力補正にはマイナスのジオプター(-1.00D〜-3.00D)を使用します。
2.1 遠距離視力補正ゾーン
遠距離を見るための補正は、レンズの上部に配置されています。この部分では、遠くの物体に焦点を合わせるために、遠視に対応するマイナスのジオプターを使用します。例えば視力0.2程度の近視の人が、遠くを見るためには-2.00Dの屈折力が必要で、この部分のレンズでも同様のジオプターを使用します。
2.2 近距離視力補正ゾーン
近距離を見るための補正は、レンズの下部に配置されています。この部分では、近くの物体に焦点を合わせるためにプラスのジオプター(+1.50D〜+2.50D)を使います。
遠距離視力にメガネ全体を合わせると近くが見えにくくなってしまうため、プラスのジオプターの分だけレンズ下部は近視の補正を弱めてあげるということです。
一例を挙げてみましょう。本を読むといった目的では遠距離のための補正である-2.00Dに対して、+1.50Dの補正かけることで、近距離視力補正ゾーンではー0.50Dになるように調整します。このようにすると近距離の物を楽に見ることができます。近距離視力補正ゾーンでは裸眼よりほんのちょっと遠くが見やすくなるぐらいの視力にするという補正ですね。
3. 遠近両用メガネのジオプターの選び方
遠近両用メガネを作る際、使用者の年齢や視力の状態に応じて、最適なジオプター(屈折力)を選ぶことが重要です。ジオプターは、近距離と遠距離に合わせた視力補正を行うため、年齢や視力の進行具合によって必要な補正力が変わります。以下の表で、年齢別にどの程度のジオプターが適切かを示し、それぞれのポイントを解説します。
年齢層 |
ジオプターの範囲 |
主な特徴 |
補足情報 |
40歳 |
+1.00D |
老眼がまだ始まっていないか、ほんの少しだけ近距離で視力の調整が必要になる場合がある。 |
一部の人では40歳前後で近くが少しぼやけて見え始めることがあるが、多くの人にはまだジオプターは不要。 |
40〜50歳 |
+1.00D〜+2.00D |
初期の老眼症状が出始め、近距離の視力がぼやけることが増える。 |
近くの文字が読みにくくなり、読書やパソコン作業などで少し不便を感じる。この段階でジオプターが必要になる。 |
50〜60歳 |
+2.00D〜+2.50D |
老眼が進行し、近距離の視力がより不安定になる。視力の補正がやや強くなる。 |
近くのものを見ても疲れやすく、焦点が合いにくくなるため、ジオプターを少し強くする必要がある。 |
60歳 |
+2.50D〜+3.00D |
老眼が進行し、近くの物がさらに見づらくなる。遠くは見えるが、近距離が特に難しくなる。 |
視力補正が強くなり、ジオプターが高くなる。この時期は、近距離を快適に見るための補正が特に重要。 |
年齢と視力の進行具合に応じて最適なジオプターを選ぶことで、遠近両用メガネの効果を最大限に引き出し、快適な視生活をサポートできます。
4. 遠近両用メガネのメリットとデメリット
メリット
- 便利さ: 近距離も遠距離も1本で補正できるため、メガネを掛け替える手間が省け、日常生活が楽になります。
- 視力の安定: 視力補正の段階的な移行がスムーズに行われるため、目の疲れやストレスを軽減できます。
- 自然な見た目: プログレッシブ型を選べば、レンズに境界線がなく、老眼鏡だと気づかれにくいデザインです。
デメリット
- 慣れるまで時間がかかる: プログレッシブ型では、最初は焦点がスムーズに合わず、数日から数週間の慣れが必要です。
- 視界の制限: バイフォーカル型では、視界に明確な境界線があり、視界の切り替えに違和感を感じることがあります。また、プログレッシブ型でも、極端に近いものや遠いものを見るときに不便を感じることがあります。
- 価格が高め: 遠近両用メガネは、単焦点レンズに比べて価格が高いことが多いです。
5. まとめ
遠近両用メガネは、視力の補正が必要な方に非常に便利なアイテムです。ジオプターを使って遠距離と近距離を補正し、視界を自然に調整できるため、生活が楽になります。
バイフォーカル型とプログレッシブ型それぞれに特徴があり、使い方や好みに応じて選ぶことが大切です。老眼が進行してきた方や、近距離と遠距離両方を同時に補正したい方に特におすすめです。