網膜・ぶどう膜の病気

網膜の構造と役割

網膜は、眼球の奥に位置します。角膜・水晶体によって屈折して入ってきた光は網膜で像を結び、視覚情報へと変換されています。カメラでいうと、フィルムのような役割を果たしているわけです。視細胞が存在し、視覚において大変重要な組織でもあります。
網膜の病気には、飛蚊症、ぶどう膜炎、糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症、中心性漿液性脈絡網膜症、網膜裂孔、網膜剥離、網膜色素変性、加齢黄斑変性症など、さまざまなものがあります。

飛蚊症

飛蚊症視野に黒い小さなものが浮遊しているように見えることです。蚊のように見えたり、髪の毛や糸くずのように見えたりします。違う景色を見てもついてきて、目をつぶっても消えることはありませんが、通常はそのうち消失します。

原因

加齢、炎症などによって硝子体に濁りが生じることが原因です。
また、硝子体剥離や網膜剥離、硝子体出血、網膜円孔、網膜裂孔などの症状の1つとして出現することもあります。

症状

  • 黒い蚊、髪の毛、糸くずのようなものが見える
  • 違う方向を向いてもついてくる
  • 目をつぶったり、擦ったりしても消えない

治療について

飛蚊症の治療は、レーザーによる治療を行います。
ただし、レーザー治療の対象となるのは、生理的な飛蚊症に限られます。

治療に関して、詳しくは医院まで直接お問い合わせください。

ぶどう膜炎

虹彩、毛様体、脈絡膜など、硝子体を包みこむように存在する組織が「ぶどう膜」であり、ここで起こった炎症を「ぶどう膜炎」と呼びます。

原因

ぶどう膜炎の原因としては、細菌やウイルスなどの病原菌への感染、免疫異常などが挙げられますが、全体の3~4割が原因不明となっています。

国内で見られるぶどう膜炎においては、「ベーチェット病」「サルコイドーシス」「原田病」を3大ぶどう膜炎と呼んでいます。また、このうち、ベーチェット病とサルコイドーシスは、厚生労働省より特定疾患に認定されています。

ベーチェット病

皮膚や眼、品膜、内臓、血管・神経などに炎症を起こす自己免疫疾患で、厚生労働省より特定疾患に認定されています。
再発性アフタ性口内炎、毛膿炎様皮疹、外陰部潰瘍、眼のぶどう膜炎、虹彩炎などの症状が見られます。虹彩炎が繰り返されることで、併発白内障や続発緑内障を引き起こすこともあります。
症状が出現したり消失したりを繰り返す点が大きな特徴です。20~40代の、比較的若い世代に多い病気です。

サルコイドーシス

全身のさまざまな臓器に肉芽腫を形成し、リンパ節の腫れを伴う病気です。ベーチェット病と同様、厚生労働省より特定疾患に認定されています。
目のかすみ、強い光への過敏(不快感・痛み)、飛蚊症、ぶどう膜炎などの症状が見られます。
女性の場合は50~60代、男性の場合は20~30代に多くなります。全体的には、やや女性の方が多い傾向にあります。

 

症状

  • 視力低下
  • 目の痛み
  • 視界のかすみ
  • 飛蚊症

炎症が目の中で拡大することから、白内障、緑内障などを合併することもあります。

治療法

炎症の程度に応じて、点眼、内服、点滴、注射などによる薬物療法を行います。
視力の低下を防ぐためには、炎症を抑えることが大切になります。一般的によく使用されるのが、ステロイド薬です。
長引くこともありますが、根気強く、定期的な通院を継続してください。

糖尿病網膜症

糖尿病網膜症糖尿病の合併症として起こる網膜の障害です。進行すると、失明に至ることもあります。

原因

糖尿病に伴う動脈硬化によって、網膜の血管が詰まったり破れたりして障害されます。
糖尿病の診断を受けた時点で、眼科で定期的に検査を受けることが、合併の予防になります。

症状

  • 視力低下
  • 目のかすみ
  • 飛蚊症
  • 視野に黒いカーテンがかかったように暗くなる

治療法

血糖コントロール、血圧コントロールが必要です。当院では、併設する糖尿病内科の内科専門外来と連携しながら治療を行うことが可能です。
網膜光凝固術、硝子体手術、抗VEGF薬注射による治療を行うこともあります。

網膜静脈閉塞症

網膜の静脈が詰まってしまう病気です。眼底出血や、黄斑浮腫を合併しやすくなるため、早期の治療が必要です。

原因

糖尿病、高血圧などの生活習慣病に伴う動脈硬化を原因とします。
生活習慣病の診断を受けた時点で、眼科で定期的に検査を受けることが大切です。

症状

  • 急激な視力低下
  • 視野の歪み
  • 目のかすみ
  • 視野が欠ける

治療法

生活習慣の改善、薬物治療などを行います。
視力低下をきたしている場合には、硝子体注射、レーザー治療などによって黄斑のむくみを改善することもあります。

中心性漿液性脈絡網膜症

網膜の中心に位置し視細胞が集中している部位「黄斑」に、水が溜まる病気です。
30~50代の男性に多く発症します。

原因

はっきりとした原因は分かっていません。
ただ、ストレスが関係しているのではないかと言われています。

症状

  • 視力低下
  • 視野の中心部が暗い
  • 視野の歪み
  • 物が小さく見える

治療法

循環改善薬やビタミン剤などを使用し経過観察することで、数カ月以内に治癒が期待できます。
ただ、長引く場合、再発した場合には、レーザー治療が必要になることもあります。

網膜裂孔・網膜剥離

網膜裂孔・網膜剥離網膜が裂けたり孔(穴)が生じたりする病気を「網膜裂孔」、網膜裂孔が進行するなどして網膜が眼底から剥がれる病気を「網膜剥離」と言います。
網膜剥離を放置すれば、最悪の場合には失明に至ります。

原因

網膜裂孔の原因には、加齢に伴う後部硝子体剥離、強度近視、事故などによる衝撃などが挙げられます。
網膜剥離の原因には、網膜裂孔からの進行、事故に伴う衝撃などが挙げられます。糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症、ぶどう膜炎、アトピー性皮膚炎などから合併するケースも見られます。

症状

  • 飛蚊症
  • 光視症(※)
  • 視力低下
  • 視野の歪み

※光視症とは、暗い場所にいるあるいは目を閉じているにもかかわらず、視界に閃光が走る症状です。

治療法

網膜裂孔に対しては、レーザーによって裂孔を焼き固める治療を行います。
網膜剥離に対しては、硝子体手術や強膜バックリング手術(強膜内陥術)を行います。

網膜色素変性

網膜色素変性とは、視力低下、視野の狭まり、夜盲(暗所で見えにくくなる状態)などの症状が数年から数十年かけて少しずつ進行する遺伝性の病気です。
厚生労働省による難病指定を受けています。

原因

遺伝子異常を原因として起こる病気です。ただ、明確な原因となる遺伝子はごく一部しか判明していません。
そのため、「原因不明」となるケースがほとんどです。

症状

  • 視力低下
  • 視野狭窄(外側から始まり、その後中心へ拡大)
  • 夜、暗所で物が見えにくい

治療法

コントラストの感受性を維持するビタミンAの投与、血流を改善する循環改善薬などによる対症療法を行います。
また、特定の波長の光をカットする遮光眼鏡、拡大鏡などを取り入れることで、生活の質を維持します。

加齢黄斑変性症

網膜の中心にある「黄斑」が異常な老化現象を起こすことで、視野の歪みや視力低下、中心暗点などの症状を引き起こす病気です。
発見・治療が遅れると、深刻な網膜障害が残ることがあります。

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